カワウソを飼いたい人必読!『カワウソをよく知るための本』(書評)




カワウソをよく知るための本
編著:コツメカワウソ研究会
監修:三輪恭嗣(みわエキゾチック動物病院院長)

カワウソって何年前から注目されている動物ですよね。
そんなカワウソさんに会えるのは、カワウソカフェ、動物園、水族館です。

この本によると、メディアなどでコツメカワウソが注目を集めだしたのが、
2007年頃だそうです。

好きが高じて、カワウソを飼いたいと思った人も少なくないのではないでしょうか。

私も、遅ればせながらブームを見て、コツメカワウソのファンになって、
いつか『お迎え』したいと思ったことのある人間です。

あまりにも好きすぎて、カワウソカフェに行ったり、グッズを集めたり、
ネットで動画を毎日見ています。

そして、カワウソの本をAmazonで検索したこともあります。

今までコツメカワウソの本といえば、かわいい写真集くらいで、
カワウソそのものを深く掘り下げている本というのは、
一般的に出回っていなかったと思われます。

今回発売された本は、カワウソについて、下記のことが書かれています。
・カワウソを取り巻く問題
・カワウソがどんな動物か
・カワウソを入手したとき必要な手続き
・カワウソを育てるのに必要な環境
・カワウソに与える食事について
・カワウソの日中の世話のしかた
・カワウソの健康を保つための情報
・カワウソがどんな病気にかかりやすいか
・カワウソに会える動物園・水族館
・カワウソについての雑学

この本が発売されることを知ったとき、
私はこの本を読めば、カワウソを『お迎え』して飼うすべを
知ることができるのではないかと、ちょっと思いました。

実際、カワウソを『お迎え』してからの、CHAPTER3 カワウソに必要なお世話の章は
非常にわかりやすく、図解付きで、詳しくお世話のことについて書かれており、
カワウソ飼育の指南書のように見えます

しかし、この本は飼うことを勧めているわけではないのです。

『この本はカワウソを飼うことを勧めているのではない』
『カワウソは一般家庭では飼うのは不向きな動物』と、
冒頭を始め、本の中で何度もはっきり書かれています。

私には、この本は、すべてを書いたうえで、
それでも、あなたはカワウソを飼いたいですかと問うているような気がします。

それは、カワウソを飼育することの大変さも具体的に書いてくれているからです。
例えば、下記のようなこと。

・もともと群れで行動する動物なので、一人にしておくと情緒不安定になるから、できる限りそばにいて、外出は最小限に抑えること
・トイレのしつけは割と早くできるものの、通常のトイレ以外にマーキングのために糞尿をあたりにひろげることがあり、それは、受容して掃除をしてあげるしかないこと
・寄生虫予防の観点から、気軽に散歩にも連れ出せないこと
・歯が鋭く、甘噛みでも出血する場合もある
・犬猫のように、見てくれる動物病院は極端に少ない

もちろん、大変なことは上記だけではないようです。
少なくとも、今あげたことだけでも言えることは、
まずカワウソにお留守番させて遊びに行くことは絶対にできないし、
常にそばにいてあげられる人がいないといけないわけです。
働いていたら無理ですよね。
それだけの経済的余裕がないといけないということになります。

カワウソを育てるオーナーの方のインタビューページにもありますが、
カワウソのために家を建てた方がいるくらい、
カワウソに人生をささげるくらいの気持ちで育てる覚悟が必要なようです。

この本を読んで、それでもカワウソをお迎えしたいと思う方、
私には無理だと思う方、
いろいろいらっしゃるのではないかと思います。

この本のなかで、サンシャイン水族館の飼育員の方が、
カワウソの情報を発信することで安易な飼育を助長してしまうのではないかと
躊躇うことがあると書いてありました。

でも、この本はカワウソのかわいさ、愛らしさといったポジティブな面も、
飼育の大変さや攻撃的な部分などネガティブな面も書いてくれているので、
いままでの『カワイイ』だけの発信よりは、
ずっと現実を見せてくれていると思いますし、この本を読んでもらうことで、
安易な飼育を防ぐ一助になるのではないかと思いました。

ちなみに、この本はカワウソを飼育する前提でどうしたらいいかということに
ページが割かれているように見えますが、
本の中ではカワウソを取り巻く問題、密輸問題、飼育放棄についても触れているページもあります。
その他、雑学、例えば、有名な日本酒『獺祭』(かわうそまつりと書いて、だっさい)の由来について、

絶滅したニホンカワウソについての記事もあり、
飼う、飼わないの話は別にして、コツメカワウソについての基礎知識が
わかりやすい文章で簡潔に書かれているので、
カワウソという動物をよく知るきっかけになるいい本だと思います。


この本の帯には、『カワウソたちの幸せをまじめに考え』とありましたが、
確かに、その気持ちはすごく伝わりました。
多くの人にこの本が読まれてくれたらと思いました。

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